時々、株式市場ではリスクパリティ戦略といった言葉を聞きます。
株式市場が大きく下落するとそれ以上の下落による損失の影響を抑えるために、許容できるリスクを小さくすること。
つまりは現在保有している株などの証券を売却してキャッシュに戻すことにつながるという話ですが、
その戦略による売却がさらなる下落を引き起こし、パニック売りの様相を呈してくるという現象が起こります。
10月初めの下落や、2018年の2月のVIXショックと呼ばれた下落時にはこのような説明が新聞で報道されていました。
説明自体は理解できるのですが、具体的に誰がどれくらいの金額でその戦略を採っているのか、
いつ頃から利用しているのか、本当にその説明の通りに行われているのか、確認のしようがありません。
他のプレーヤーの動向を探り、常に動き続ける相場の中で自分の手法を確立して稼ぐことができる方がいるのは事実だとしても、
株式市場の全体像について、その実情を全て把握している人などいないのではないかと感じています。
調べれば調べるほど知らないことが多く存在することを思い知らされますが、今回も初めて触れる分野の本を読んでいます。
「フラッシュボーイズ 10億分の1秒の男たち」という本です。
作者はマイケル・ルイス。
ソロモン・ブラザーズで3年間債券のセールスとして勤務した経験をもとに書かれました。
「ライアーズポーカー」や「マネー・ボール」などでも有名な方ですね。
といってもこの方の本を読むのは今回が初めてなのですが。
中身はわたしたちにはわかりようのない、取引所のコンピュータの中で行われていることについてです。
HFT(高頻度取引)業者によって行われている取引の実態を突き詰めていくという内容。
ある投資家がブローカーを(日本で言うところの証券会社)を通じて注文を出した時に、
各取引所に注文が届くまでのほんのわずかな時間差を利用することで儲けるHFT業者と、
そのような取引が行われていることを知りつつ、取引所ではなく自身が用意したダークプールを使わせることで仲介料を得ていた投資銀行。
それぞれの実態を知ったブラッド・カツヤマがカナダロイヤル銀行に勤めていた時に開発した、
ソーと呼ばれるシステムを使って新たな取引所を作ろうという話です。IEXというダークプールが実際に開設されており、現在進行形な話だそうです。
まだ読み終えたのは半分程度ですが、初めて聞くことばかりで中々読み進めるのに苦労します。
しかし、単語としては知っているHFTSやHFT業者などの実態の一部分を事細かに書いているのでとても引き込まれるものがあります。
主に腹立たしさが読み進める動力となります。あくどい方法で誰にも知られることなくこっそりとしかも大金を稼ぎ続けているという話ですからね。
しかし、ここに書かれている手法が果たして日本でも使われているのか、
ここで競っているのはマイクロ秒というとても早い世界での話なのですが、
果たしてこれに日本の株式市場で投資をしている個人投資家に影響があるのかどうか?
ダークプール自体は存在しているという話ですがなんとも気になりますね。
2018/12/9追記
時間がかかりましたが昨日ようやく読み終えることができました。
読みづらいというレビューをちらほらと見かけるのですが、
正直、確かに読み進めるのが大変でした。
本書のテーマは株式市場でほぼビジネス本です。
しかしあくまでもノンフィクション作品なので、
登場人物(実在する方々)の人となりや情景描写などが必要以上に多いように感じます。
また題材に馴染みがないという理由もあるかもしれません。
そんなわけで大変難しい本書でしたが、とても勉強になりました。
「高速取引業者」、ブローカー(証券会社)、取引所、
それぞれが投資家にわからないように薄く広く利益をかすめ取っているということでした。
米国の市場で行われていることではありますが、日本でもこの本に書かれていることが起こっているのか疑問に思いますが、
巻末にはFACTAの阿部重夫氏による文章で日本でもやはりそうしたことが行われているという話が載っています。
このことを知ったからといって何がどうできるというわけではないのですが、
わたしたちの知らない間に、頭の良い人たちがどんどん市場を作り変えて行っているということだけは知っておいたほうが良いんでしょうね。
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